大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

大阪高等裁判所 昭和43年(う)1615号 判決

控訴人・原審弁護人 得津正熈

被告人 坂本興業株式会社 外一名

検察官 岩本信正

主文

本件各控訴を棄却する。

当審における訴訟費用は、全部被告人両名の連帯負担とする。

理由

本件各控訴の趣意は、被告人両名の各弁護人得津正熈作成の控訴趣意書記載のとおりであるから、これを引用する。

控訴趣意中被告人両名のための憲法の解釈、適用の誤りの主張について

所論は、小売商業調整特別措置法三条一項、二二条一号、二四条、同法施行令一条、二条はいずれも憲法二二条一項に違反する無効な法令であるにも拘らず、原判決がこれを合意であると解し、原判示事実にこれを適用して被告人両名を有罪としているのは、結局右憲法の解釈、適用を誤つたものであつて、破棄を免れないものである、というのである。

よつて案ずるに、小売商業調整特別措置法(以下措置法という)三条一項は、政令で指定する市の区域内の建物については、都道府県知事の許可を受けた者でなければ、小売市場(一の建物であつて、一〇以上の小売商(その全部又は一部が政令で定める物品を販売する場合に限る)の店舗の用に供されるものをいう)とするため、その建物の全部又は一部をその店舗の用に供する小売商に貸し付け、又は譲り渡してはならない、と規定し、同法施行令一条は、措置法三条一項の政令で指定する市は別表第一のとおりとする、と定め、別表第一によれば北海道札幌市、旭川市、神奈川県横浜市、石川県金沢市、愛知県名古屋市、京都府京都市、大阪府大阪市外二四市、兵庫県神戸市外六市、和歌山県和歌山市、福岡県福岡市、北九州市、熊本県熊本市となつており、同法施行令二条は、措置法三条一項の政令で定める物品は別表第二のとおりとする、と定め、別表第二によれば一、野菜二、生鮮魚介類となつている。以上によれば、小売市場(措置法三条一項の小売市場をいう、以下小売市場という)開設のための小売商に対する貸し付け又は譲り渡しを都道府県知事の許可にかからしめているのであるが、このような許可制がとられている理由としては、その許可基準として措置法五条が、都道府県知事は三条一項の許可の申請があつた場合には、その申請が次の各号の一に該当すると認められる場合を除き、同項の許可をしなければならない、と規定し、同条一号として、当該小売市場が開設せられることにより、当該小売市場内の小売商と周辺の小売市場内の小売商との競争又は当該小売市場内の小売商と周辺り小売商との競争が過度に行なわれることとなり、そのため中小小売商の経営が著るしく不安定となるおそれがあること、と定め、このような場合には許可をしないことができるものとしているのである。さらに同条二号は前条一項四号の貸付条件又は譲渡条件が主務省令で定める基準に適合するものでないこと、と規定し、小売商業調整特別措置規則五条によれば、措置法五条二号の主務省令で定める基準は、次のとおりとする、と定め、同条一号によれば貸付の場合にあつては申請者がいかなる名義であつても、その店舗の用に供させるため貸し付ける小売商から借家権利金を受領しないこと、とされ、同条二号によれば借家権利金以外の貸付条件または譲渡条件がその建物の位置、構造、建築費、周辺の小売市場の貸付条件または譲渡条件その他の事情からみて適正であること、とされており、このような基準に従わない場合には許可しないことができるものとしているのである。以上によれば措置法五条一号は小売市場の乱立と、それによつて惹起せられる小売商間の過当競争を直接防止しようとするものであり、同条二号は小売市場乱立の根源をなしている市場業者による過大な家賃等の徴収を防止することにより、間接に小売市場の乱立とその結果である小売商間の過当競争を防止しようとするものであつて、これらが右許可制をとるにいたつた理由であると解され、このことは措置法一条が、この法律は、小売商の事業活動の機会を適正に確保し、及び小売商業の正常な秩序を阻害する要因を除去し、もつて国民経済の健全な発展に寄与することを目的とする、と規定していることからも明らかである。

ところで、憲法二二条一項は、何人も、公共の福祉に反しない限り、居住、移転及び職業選択の自由を有する、と規定し、職業選択の自由を認めているが、職業選択の自由には営業の自由を含むものであることは明らかである。そしてこれらの職業選択ないし営業の自由が公共の福祉による制限をうけるものであることも論をまたないところである。そこで前示のような理由により小売市場の開設のための貸付又は譲渡について許可制をとることが、果して職業選択ないし営業の自由に対する唯一の制約である公共の福祉にそうものといえるかどおかについて検討をするに、いうまでもなく、日本国憲法が予想している経済的基盤は、自由経済、自由競争を基調とするものと考えられ、このような経済体制の下においては、営業の性質上国の独占とされるものを除いて、職業選択ないし営業の自由を認めても、自由競争による経済の自律性いわゆる神の見えざる手によつておのずから調和がもたらされることが期待されるのであるから、かかる自由に対する公共の福祉からする制限もできる限り厳密に限定されるべきものであると一応思料されるのである。しかしながら、資本主義経済の高度化、複雑化にともない前記のような予定調和が図式どおり行なわれ難い場合があり、かかる場合や、また、仮りに予定調和がもたらされるとしても予定調和の過程において、自由競争によつて生ずる著るしい弊害が社会公共の立場から看過することができない場合があることも既に明らかであり、このような自由競争によつて生ずる著るしい弊害が社会公共の立場から看過することができない場合には、かかる自由競争を制限し、その弊害を除去ないし緩和することが公共の福祉にそうものであつて、かかる自由競争を放任し、その弊害を看過することは、公共の福祉に反するものであるといわなければならない。

さて、小売市場についてみると、その新設を自由に放任すると小売市場が乱立し、その結果小売市場内の小売商と周辺の小売市場の小売商との間又は小売市場内の小売商と周辺の小売商との間に過当競争が行なわれることとなりそのため小売商の売上が減少し、経営が困難になり、やがて小売商の共倒れという事態にたちいたるおそれがないとはいい難く、またその過当競争の過程において不公正な販売方法が行なわれたり、あるいは不正な営業が行なわれるおそれもあり、また経営の困難とともに生野菜、生鮮魚介類の販売に要求される衛生安全基準が維持されなくなつたり、その結果伝染病の発生する危険性すら予測されるにいたるのである。そして、小売市場は通常市民が日常生存するために必要な野菜、魚等の生活必需品を扱つており、このような市場小売商の営業ならびにその存廃は、地域により市民が小売市場に依存している度合に高低はあつても、市民の日常生活の維特に直接影響するところが極めて大であること、さらに、小売商とくに小売市場内の小売商は大部分零細な資本で経営されており、開業が容易であり、年々増加の傾向を示していること、日本全人口の約一割が小売商業の下で生活しており、我が国の人口問題、雇用問題が解決される重要部門であり、国家社会的にみて小売商人の階層を崩壊せしめないで存続維持させることが国家社会のために極めて重要であること等小売市場および小売商の特殊性に徴すると、前示のとおり小売市場の新設を自由に放任し、その乱設の結果惹起される過当競争による著しい弊害はまさに社会公共の立場から看過することができないもので、そのような状態を放置することは公共の福祉に反するものであるから、前示のような過当競争を防止するため小売市場の開設のための貸付又は譲渡を許可にかからしめる規定を設けることは、憲法二二条に違反するものとは認められない。

ところで、所論は、過当競争の回避という見地から許可制が認められるとしても、現実の規制にあたつては明白な合理的根拠が存しなければならないが、遺憾ながらこれを全く見出しえない、として、まず措置法の適用をうける地域は政令で全国で僅が一七市を指定しているのみであり、東京都の特別区やその近郊都市は勿論その他の大都市であつてもこれに入つていないものが多い、と主張するので検討するに、措置法の適用をうける地域は、前示のとおり全国で四二市であつて、所論が一七市であるというのは誤りであるが、東京都の特別区やその近郊都市は勿論その他の大都市でこれに入つていないものがあることは所論の指摘するとおりである。しかしながら、小売市場の開設のための貸付等が許可制とされている所以は、前示のとおり小売市場の乱立の結果惹起される過当競争を防止しようとするにあるのであるから、小売市場の乱立が目立ち小売市場相互間ならびに周辺の一般小売業者との関係を調整する必要があると認められる地域について指定をしているのであり、たとえ大都市であつても右必要性が認められない地域については何等指定をする必要がないのであつて、これをもつて右指定が明白な合理的根拠を欠くとすることはできない。

次に、所論は、許可の対象となる小売市場とは、一つの建物であつて、その全部又は一部が野菜、生鮮魚介類を販売する一〇以上の小売商の店舗の用に供されるものであり、それ以外の場合には何等規制の対象としていないのであるが、過当競争の回避という点のみからすれば「スーパーマーケツト」が最も問題であり、全く野放し状態にあるところから極めて片手落である、と主張するので検討するに、許可の対象が小売市場であることおよび「スーパーマーケツト」が措置法の規制の対象外にあることは所論のとおりであるが、措置法第三条第一項は小売市場内の小売商と他の小売市場内の小売商との間および小売市場内の小売商との周辺の小売商との間における過当競争を防止しようとするもので、これが憲法二二条一項にていしよくするものでないことは叙上説示のとおりであつて、このことは「スーパーマーケツト」の営業を許可制にする法律の規定が存在しないことによつて結論を異にするものでない。すなわち、措置法一条に規定する目的を達成するために同法は、同法三条一項のほかにも種々の規定を用意しており、また百貨店法の如く中小商業の事業活動の機会を確保するため百貨店業を営もうとするものは通商産業大臣の許可を受けなければならぬ、と規定している法律も存在するのであつて、小売商に対する大資本あるいは大組織からの圧迫に対しては、小売商を保護するため種々の立法措置が考えられ、「スーパーマーケツト」営業を許可制にすることも、このような立法措置の一つとして考えうるところであるが、かかる立法措置を講ずるかどうかは専ら立法政策の問題として慎重に検討されるべき事柄であつて、かかる立法がなされていないからといつて直ちに措置法三条一項が憲法二二条一項にていしよくすることになるとは考えられない。

さらに、所論は、現実の許可基準内規のうち距離規制として新設小売市場と最寄りの既存の小売市場とが七〇〇米以上離れていることとされているのは極めて非現実的であると主張するので案ずるに、福家一行の司法警察員に対する供述調書、当審証人富岡正一の当公廷における供述によれば、措置法三条一項の申請に対する許可基準としては同法五条が定められているが、更にその運用について適正を期するため同法の運用通達に基づいて中小企業庁長官の承認を得て大阪府小売市場許可基準内規を作成し、これによつて運用の最善を計つていること、右内規の内容は(1) 新設市場の建物が最寄の市場より七〇〇米以上離れていること(2) 新設市場を中心として三五〇米以内の世帯数と同地域内の食料品店を扱う店舗数から計算した一店舗当りの生計費が標準消費支出を上廻ること、以上(1) および(2) の要件を満たせば原則として許可とするが、以上の要件を欠く場合であつても住宅が将来増加する見通しがある場合、最寄りの市場が同意した場合、該市場が強制収用で立退きを命ぜられた場合、七〇〇米を欠いてもその間に線路、河川等があつて明らかに消費購売圏が分かれていると判断された場合には許可することとなつていること、七〇〇米という距離を算出した根拠は、一つの標準小売市場が成り立つための世帯数を算出し、右世帯数を大阪市内で一番人口密度の高い東成区で計算した場合直径七〇〇米の円を描いた地域に該当するということから算出したものであること、申請があつた場合は、業界代表、消費者代表および学識経験者によつて構成された小売市場調整協議会に諮問し、その審議の結果を参考にして、最終的に知事が許否を決定した上、市長と協議し意見が合致すれば一致したところによつて正式に許否を通知し、もし意見が合致しない場合は大阪通産局長の裁定をうけ、右裁定によつて許否を通知するという手続になつていることが認められ、以上認定した事実によれば右内規は極めて弾力性をもつたものであり、その運用にあたつても弾力的に処理されていることが窺知され距離規制が既存市場と七〇〇米以上離れていることとされているのもその算定の根拠に照し、これを極めて非現実的であるとすることはできない。

したがつて、措置法第三条一項、同法施行令一条、二条、措置法三条一項に違反した者を処罰することを規定する同法二二条一号、行為者を処罰する外法人、使用者等をも処罰する旨を規定する同法二四条は、いずれも合憲であつて、右法条を原判示事実に適用して被告人等を有罪とした原判決には所論のごとき憲法の解釈、適用の誤りはなく、論旨はいずれも理由がない。

控訴趣意中被告人両名のための量刑不当の主張について

よつて、所論にかんがみ記録を精査し、当審における事実取調の結果をも参酌して案ずるに、被告人等が本件犯行に至つた経緯ならびに犯行後の事情として、被告人等は大阪市下小坂に「八戸ノ里中央センター」、同市近江堂に「近畿センター」という名称で、いずれも大阪府知事の許可を得て小売市場を開設していたものであるが、さらに「大鉄ストアー」という名称のもとに原判示場所において小売市場を開設しとうと計画し、予め最寄の既設市場である矢田市場からの距離を測つたところ、約七二〇米あり、これは大阪府の許可基準内規にも合致し、かつ周辺に民家も多いところから小売市場の適地であると考え、昭和三八年六月頃右市場予定地の地主からその敷地を敷金九四六万円、月賃料三万八七〇〇円で借り受ける契約を結び、小売市場建設の設計図や商店配置図を作成し、小売商人募集の準備にとりかかるとともに、同年七月一六日大阪市長を経由し大阪府知事に措置法三条一項の許可申請を提出したこと、その二週間位後に大阪市係員が実地調査に赴き前記矢田市場との距離測定を行なつたが、当時矢田市場との間にある道路の中間附近に道路として明示されていない私有地で板塀等によつて囲われたところがあり、被告人は当然に迂回して測るべきものと考えていたところ、測定に立会つた矢田市場側から板塀は誰かが勝手に作つたものであるから迂回せず直線で測定すべきだ、と主張したため、係員がその双方を測つたところ迂回路によると七一六・八米、直線路によると六四四・六米となり、その結果迂回路であれば許可条件に適するが、直線路によると矢田市場の同意がなければ不許可になるであろうことが判明したこと。その後間もなく何者かによつて右の塀が全部取り除かれ一般人の通行が可能な状態になつたこと、かくして同年九月二三日大阪府の係員が実地調査に赴いたが、当時は前記問題の場所は一般人の通行可能な状態となつていたので、距離的には不適格であつたこと、一方被告人等は同年九月頃から市場商人の募集の広告をしていたが、その後月々地代を払わねばならないところより、許否未定のまま、同年一二月末頃地鎮祭を行ない、翌三九年二月頃から建築工事を開始したこと、他方申請を受けた大阪市は同年八月一〇日実地調査の結果を付して大阪府に書類を送付し、同年九月六日大阪市は迂回路の原因となつていた塀等の障害物もその土地の所有者と大阪市との間に売買契約が締結されたため迂回路は必要がなくなつた、又矢田市場を中心として三五〇米以内の世帯数は二九二三世帯でこの地域内に食料品を扱う店舗一〇八軒がある等の意思を大阪府に追加送付したこと、昭和三八年九月二三日大阪府係員が現地調査を行い、その結果大鉄ストアー附近の対象世帯数は三〇八三世帯であるが、矢田市場周辺の二九二三世帯も含まれること、迂回路の障害物は全く撤去され、幅員四米の道路となつているため前記距離は六四四・六米であることが判明したこと。同年一〇月二四日大阪府小売市場調整協議会に右申請の許否について諮問したが保留ということになり、同年一二月二四日開催の同協議会において不許可相当であるが、矢田市場が設置について同意する可能性もあるのでしばらく経過をみるという結論になつたこと、ところが被告人等が許否未定であるのに拘らず商人募集の新聞広告をしたり、市場の建設工事に着工したりしたので、昭和三九年二月一五日大阪府商工部長名で中止するよう警告するとともに出頭を促したが、出頭しなかつたこと、同年二月一七日矢田市場商人会が開設反対の陳情を行い、工事進捗状況の写真を提示したこと、被告人等は右警告にも拘らず同年三月三日付の新聞に商人募集の広告を掲載し、事態もますます悪化してきたため、大阪府は矢田市場が同意をする可能性が全くなくなつた、と判断し不許可の内定をし、大阪市長と協議したところ意見が合致したので、同年三月一四日付で不許可の指令書を送付したこと、これに対して被告人等は異議の申立をしなかつたこと、そして被告人等はその当時既に相当数の小売商人との間に店舗貸付の仮契約をすませ、店舗保証金も受領し、これを工事費に流用していたことや、工事を中止した場合は、建築業者は勿論既に仮契約をすませた小売商人との間に契約不履行を生ずる結果となるため、工事を続行し、商人の募集も続行したこと、そして工事も大半終りかけた同年五月初頃大阪府から警告をりけたが、そのまま同年六月六日に建物を完成し、小売商人に店舗を貸付け、小売市場を開設したこと、その後、同年六月二四日と七月一四日の二回にわたつて大阪府は警告を発したが、被告人等が依然として市場の開設を継続しているため、告発し、同年一一月二四日被告人両名が起訴されるに至つたことが認められる。

以上認定の各事実より推考するとき、被告人等は本件申請以前に既に該市場の敷地を地主から高額の敷金と賃料で借り受け、さらに右申請後その許否が決せられる以前に市場の小売商人との間に仮契約を結び、小売商人から店舗保証金を受領したり、市場の建築工事を開始し、右店舗保証金を工事費に流用しているのであつて、このような行為はいずれも申請に対する許否が決せられてから行うべきのものと考えられ、ことに昭和三八年九月上旬頃には既に該市場と矢田市場との間の道路に存在した障害物も取り除かれたため、その間の距離が許可基準内規の要件を満たさなくなり、したがつて許可の見通しも予断を許さないことが判明したのであるから、以上のような市場建設事業の独走を慎しむべきであつたと考えられるのである。しかるに被告人等がこのような行為におよんだのは、もつぱら被告人等の危険負担においてなした投機的行為とみられても止むをえないものであり、またこれらの既成事実があつたからといつて、右申請が不許可になつた後も右事業を継続することが正当化される訳のものでないことは論をまたないところである。さらに被告人等は右申請が不許可になつても、これに対し法律が認める救済方法である異議の申立をすることなく、大阪府よりの再々の警告ならびに出頭要請に対しても耳を閉して、ひたすら事業を継続しているのであつて、その犯情ならびに犯行後の情状は軽くないといわなければならない。

以上ならびにその他記録にあらわれた諸般の情状を考量すると、被告人等の所為が、所論のとおり、往々にして見受けられる当初から距離制限に違反することを敢えて承知の上でなされた計画的なものと事情をことにすること、被告人等が不許可になつた後も当局の警告を無視して市場を開設したのは、当初から当然許可になるとの確信のもとに巨額の資本を投下したことや、多数の小売商人から早期開設を要望されていたことによるものであること、その他所論の各事情を参酌してもまだ原判決の科刑が重きにすぎ不当なものであるとは思料されないのである。論旨は理由がない。

よつて、刑事訴訟法三九六条、一八一条一項本文、一八二条を適用して、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 本間末吉 裁判官 松井薫 裁判官 梨岡輝彦)

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例